Salesforce Analytics Cloud入門(1)~まずは5分で概要の理解から~

July 30, 2015 Naoki Kitaarashi

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昨年のDreamforceで発表されたWaveことSalesforce Analytics Cloudですが、日本でのリリースが迫ってきました。この8月から日本でのパイロットが開始され、秋には正式リリースが予定されています。アピリオはSalesforceのパートナーとしてこの製品の展開に力を入れています。アピリオUSでは既にいくつかの案件に携わっていますし、日本でも正式リリースに向けて着々と準備を進めています。SalesforceのイベントやWebサイトでAnalytics Cloudのデモを見られた方はたくさんいらっしゃると思いますが、製品の詳細についてはまだよく分かっていない方も多いのではないでしょうか。そこで今回からこのAnalytics Cloudに関して、製品の機能や特徴、アーキテクチャー、データ連携・変換の方法、ダッシュボードによる分析レポートの構築方法などについて紹介していきたいと思います。

Analytics Cloudとは

Analytics Cloudは2013年に買収されたEdgeSpring社の技術をベースに開発されたSalesforceのクラウド環境上に構築されたインサイト分析のためのプラットフォームです。通常のforce.com環境を提供するサーバーがPodと呼ばれるのに対して、Analytics Cloud機能を提供するサーバーはSuperpodと呼ばれ分析タスクの実行はこのサーバー上で行われます。SuperpodはPodとは独立した専用ハードウェアでありSalesforceの各データセンターに配置されているそうです。 Screen Shot 2015-07-29 at 21.26.47

[Analytics Cloud実行環境]

Analytics CloudはいわゆるBI(Business Intelligence)ツールにカテゴリーされる製品であり、Salesforce上のオブジェクトおよび外部データをデータソースとして各種の分析およびダッシュボードによるレポート機能を提供します。利用にはプラットフォーム・ライセンスおよびユーザー・ライセンス(Builder/Explorer)が必要となります(注 Sales Cloudに対して分析機能を提供するSales Wave Analyticsというアプリケーション・サービスも別途提供されています)。

Analytics Cloudの特徴

Analytics Cloudには数多くの特徴がありますが、他の製品と最も差別化されるのは次の3点と考えます。

  • シンプルかつ直感的なWebベースのユーザー・インターフェース

Webブラウザ上でユーザーの操作によりグラフが動的に変化するデモを見られた方はよく分かると思いますが、非常に見栄えがよく使い勝手の良いユーザー・インターフェースを提供します。BIツールとして見ると利用可能な分析機能はそれほど豊富なわけではありませんが、その分だけ直感的で使い易いインターフェースを提供できています。実際に使ってみると実感できますが、製品の謳い文句にありますように、分析の専門家ではないビジネスユーザー自身が手軽に分析を行えるプラットフォームだと思います。

  • クラウド・ベース

Salesforce本体と同じようにクラウド環境に構築されるサービスであるため、ユーザー側でのプラットフォームの準備が不要でありオンプレミス上に導入する製品と比べると製品導入までの期間が圧倒的に短いです。また詳細は後述しますがデータセットと呼ばれる独自のキー・バリュー方式のデータ・ストアを使用することで、分析対象のデータの準備を簡単に行うことができます。もちろんクラウド上に構築されるサービスであるため拡張性にも優れています。

  • SFDC連携

Salesforce環境と密接に連携しており、force.com環境とのシングル・サインオンやユーザー/ロールによるアクセス権の連携ができます。データソースとしてはSalesforceオブジェクトまたはCSVファイルをサポートします。Salesforceオブジェクトの場合もforce.comサーバー上のデータを直接参照できるわけではなく、データをロードする必要がありますが(そのため、Salesforceオブジェクトに対してリアルタイムな分析が行えるわけではない)、データロードの設定はGUI上で簡単に行えデータ型の指定も不要であるため、作業はとても簡単です。 これらの特徴を踏まえますと、Salesforce オブジェクトに蓄えられたデータを対象にしたBIソリューションを構築したいケースにおいては、驚くほど簡単に分析を開始できるツールがAnalytics Cloudです。

Analytics Cloudのポジショニング

Analytics Cloudは従来の製品に比べてとても魅力的な特徴を備えていますが、従来の製品が提供する全ての機能を置き換えられるわけではありません。現バージョンのAnalytics Cloudで実現可能なことと実現できないことをきちんと理解しておくのは、適用を検討する上でとても大事なことです(注:Analytics Cloudは頻繁に機能拡張を行っていますので、この情報は2015年7月時点のものです)。 下表ではBIツールが提供する機能を大きく4つの領域に分けています。Analytics Cloudはどちらかと言えばLightな分析機能を提供するツールであり、適していると考えられるのはタイプAとBです。SASRといった統計解析ツールは傾向予測や相関性分析のような高度な分析機能を提供しますが、現バージョンのAnalytics Cloudはこうした分析機能はサポートしません。また、クラウド・プラットフォーム上のサービスであるためリソースには制約があり、いわゆるビッグデータ解析には適しません。 Screen Shot 2015-07-29 at 23.39.13

データセット、レンズ、ダッシュボード

Analytics Cloudではデータソースから取得したデータを「データセット」と呼ばれるキーバリュー型のストアに格納します。BIの用語に慣れた方なら「データセット」は一種のデータマートと考えると分かりやすいと思います。「データセット」に格納されたデータからは「レンズ」を通して分析結果を取得します。「レンズ」はデータをグラフや表として表示するためのビューであり、クエリー条件と表示形式から構成されます。「ダッシュボード」は複数のレンズを組み合わせてレポート形式にしたものであり、ユーザーが実際に分析結果を参照するのはこの「ダッシュボード」になります。 Screen Shot 2015-07-30 at 11.06.55

[データセット、レンズ、ダッシュボードの関係]

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[レンズの表示例]                                                      [ダッシュボードの表示例]

ELT処理(Extract Load Transform)

通常、BIツールでデータ分析を行う際にはETL(Extract Transform Load)処理を行ってRDBMS等のデータソースからデータウェアハウスやデータマート上にデータを準備します。 ETL処理ではデータソースからのデータの抽出→データ構造の変換→BI環境へのデータロードの3種類の処理を行います。一方、Analytics Cloudではこの一連の処理をELT(またはEtLT)と呼び、処理の順番がETLとは異なっています。ELT処理ではデータを変換してからロードを行うのではなく、ロードを行ってからAnalytics Cloud上でデータの変換を行います。 このような仕組みを取ることで事前のETLツールによるデータ変換処理を省力化することができ(Salesforceオブジェクトの場合は事前のETL処理はなし、外部データについては必要最小限の変換を行う想定。EtLTの小文字のtはこの最小限の変換処理を表している)、分析データの準備作業をスピーディーに行うことができます。

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[Analytics CloudによるELT(EtLT)処理のイメージ]

このELTの仕組みも、従来のBIツールと比べてできるだけ簡単に分析環境を導入できるようにするためのAnalytics Cloudの技術的な工夫の1つです。

外部データ連携

Analytics CloudでSalesforceオブジェクト以外のデータをどのように扱うかについて興味がある方は多いと思います。 分析のバリエーションを増やそうと考えた場合、やはりSalesforceの外部に保管されたデータも分析対象に加えたいものです。Analytics Cloudは外部データとしてCSVまたはExcelデータをサポートし、ロード時にデータ構造を記述したメタデータを使用します。データはGUIから手作業で取り込むこともできますし、REST形式の外部データAPIを利用して自動化することもできます。またInfomatica等のいくつかのETLベンダーはAnalytics Cloudとの連携機能を提供しているようです。データセットとしてAnalytics Cloud上に取り込んでしまえば、外部データはSalesforceオブジェクト・データと全く同じように扱うことができます。

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[外部データの取り込みイメージ] Screen Shot 2015-07-30 at 12.05.06

まとめ

今回はBIツールとしてのAnalytics Cloudの特徴や構成要素について概要レベルで説明しました。既存のSalesforce環境に迅速に分析ソリューションを導入可能なAnalytics Cloudの可能性について少しは実感していただけたでしょうか? 次回はAnalytics Cloudの基本的な構成要素であるデータセット、レンズ、ダッシュボードについてもう少し詳細に紹介していきたいと思います。 もしAnalytics Cloudのカッコいいデモ画面をまだ見たことがないという方がいらしたら下記のサイトを訪れてみて下さい。PCブラウザ上でAnalytics Cloudのダッシュボードを使ったデモを体験できます。 サイト:Analytics Cloud Playground

(関連ブログ)

Salesforce Analytics Cloud入門(2)~レンズとダッシュボードを使って手軽に分析を~

Salesforce Analytics Cloud入門(3)~データセット ~

Salesforce Analytics Cloud入門(4)~EtLTによるデータセットのロードと変換 ~

Salesforce Analytics Cloud入門(5)~ ダッシュボードJSONによるカスタマイズ開発 ~

 

著者について

Naoki Kitaarashi

アピリオのシニアコンサルとしてクラウドの世界に身を投じてはや5年あまり。プロジェクトでの立場に応じて、アーキテクト、リーダー、デベロッパーと様々なロールの仕事に携わっています。続々と新しいサービスと技術が登場するSalesforceの世界はエンジニアとして常に刺激を持ち続けられるエリアであり、2019年からはMuleSoftソリューションの起ち上げに関わっています。しばらくはAPI-ledなシステム連携を広めることに全力投球!!

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